日本中が少子化に揺れている。2003 年には合計特殊出生率が1.29まで落ち込んだが,実は出生率の低下は最近の現象ではない。あまり知られていないが、1975年に2.0を切って以来30 年間、ほぼ一直線で下がり続けてきたのだ。これは一部で言われている、女性の高学歴化や経済力の向上だけでは説明がつかない。
子供は途上国では家事や家計を助ける「労働力」だが、先進国では「金食い虫」。それなりの理由がなければ、もはや投資効果のない子供を産まなくなるのは自然である。少子化は先進国の宿命だ。
先進諸国では65 年前後から85年前後まで出生率が低下したが、その後の傾向は国により違う。84年には米国・フランス・日本の出生率は同じ1.81だった。それが15年以上を経た近年では,回復してきた米国(2.13, 2000年)やフランス(1.90, 2001年)と日本(1.29, 2003年)の間に大きな差が生じている。
日本では少子化対策といえば育児支援と思われがちだが、実は米国は貧弱な育児支援にもかかわらず、出生率が回復した。フランスは充実しており、日本は米・仏の中間にあたる。また2002年に1.73だったオランダのように、育児支援が手薄でも出生率が高い国もある。このように、育児支援と出生率の間に因果関係を見つけるのは難しい。何が、日本と他の先進国間の出生率の差をもたらしたのだろう。
私は最大の違いは両親の働き方や家事分担にあると思う。例えば保育施設の整備がほとんど進んでいないオランダの場合、週4日づつずらして働く夫婦も多く、保育園利用を週3回ですむ。米国や英国では働き方が弾力的で、男女共に転職が収入やキャリアにマイナスに働かない。つまり、出産の機会費用が低い。また北欧諸国でも、夫の家庭参加率が高い。つまり先進国でありながら出生率の高い欧米諸国の共通点は「仕事」と「家庭」での男女平等が進んでいること。逆にいえば仕事と家庭という双方の「場」での性別役割分担が根強く残る国は出生率が低い。代表例が日本だ。
仕事との男女平等が進まない国では、女性にとって出産は家事負担の増大に他ならない。つまり現在の日本の働き方と社会のあり方を変えない限り「仕事と家庭の両立」は女性にとって単に大変なだけで、夢や憧れの対象ではない。
実際に様様な調査を見ると、多くの女性は「出産したら仕事を辞め、しばらくして再就職する」ことを望む。
こうした状況の中、政府が目指すべきは「子供を産み育てやすい社会」ではない。時間はかかるが、男女が負わされている役割の壁を崩し、子供の有無や結婚・未婚を問わず個人として尊重される社会を目指すべきだ。
それがひいては「結婚して子育てしやすい社会」を作り、結果として出生率の向上にもつながっていくと私は思う。
(2004年12月21日号)
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